易経で自分らしさを磨く

~『易経カード』を人生のシグナルに~

「戦わずして勝つ」

〇「今日の易占から」

  • 今日の易占は「天水訟」の「五爻変」でした。
  • 「訟」(しょう)は、争訟に臨むときですが、訴訟でケリをつけてもしこりが残ります。日頃から争いごとの生じない関係づくりがベストであり、できれば早めに手を打って、少なくとも和解できることがベターです。 
  • 「五爻変」ですから、戦えば勝訴しますが、相手の立場も考えて互いの資源をより有効に活かせる方がいいですね。
  • 本日のテーマは「戦わずして勝つ」とします。

 

〇「地域を楽しむ」

  • 当地域・四條畷ゆかりの楠木一族の事績から観えることは、正成を始めとして「戦えば必ず勝つ」、そのための戦略・戦術・兵法を駆使できる勇猛かつ賢明な武将であったことです。
  • しかし最善の策とされている「戦わずして勝つ」といえば、やはり豊臣秀吉をイメージします。
  • 秀吉(1537~1598年)は、安土桃山時代・戦国時代の武将として、農民に生まれながら織田信長に仕え、戦を通じて頭角を現して、ついに天下人になった「叩き上げヒーロー」の典型です。

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    豊臣秀吉肖像画
  • 同時に、秀吉の特徴は「人たらしの名人」といわれるように、相手方の立場・思いを察して「戦わずして勝つ」ことに秀でた武将であったことも事実です。
  • 信長が本能寺で明智光秀に討たれた後、秀吉が光秀を討ち滅ぼす際の攻め方においても、また伊賀・伊勢を領国としていた信長の次男・織田信雄(のぶかつ)を落とす時にも、自他の状況を観ながら相手に逃げ道を用意し、いわば「戦わずして」目的を果たしました。

 

〇「観る力を養う」

  • 今日のテーマ「戦わずして勝つ」は、中国の春秋時代の武将であり儒学者である孫子の兵法に説かれた言葉として有名です。以下にその口語読み下し文と解釈の一部を抜き書きしました。

孫子曰く、凡そ用兵の法は、国を全うするを上と為し、国を破るは之に次ぐ。」孫子が言うには、基本的に戦争においては、敵国を保全した状態で傷つけずに攻略するのが上策であり、敵国を撃ち破って勝つのは次善の策である。)

「是の故に、百戦百勝は、善の善なる者にあらざるなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。」したがって、百回戦って、百回勝利を収めたとしても、それは最善の策とは言えない。実際に戦わずに、敵を屈服させるのが最善の策である。)

  • 「国」を「軍」あるいは「組織」に置き換えても、その言わんとするところは伝わります。
  • また、老子の教えの中に「不争」という考え方があります。
  • 老子によれば、「不争=争わないこと」「戦わないこと」こそが‶徳〟であり、徳のある人ほど、いたずらに人と争ったりしないものだと説きます。
  • そして『易経』の基になっている周易は、中国最古の哲学思想ともいえるものです。本日の卦「天水訟」に説かれているように、「戦わずして勝つ」という教えにおいても、儒学全般はもとより老荘思想を含めた学問思想の豊かな源泉になっていると言うのも過言ではないようです。